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猫である。

あたしはヒトの言葉を使った思考を通して 時間や死について知った。し、病院や車、道路に公園がうちの外にはいっぱい在ることもまた知った。好奇心で有名な生き物の猫だが、それらをこの目で確かめに外に出たくてたまらなくなることはない。安心が大好きだもの。ただでもうちの中から王国のうえでまどろみながら、窓を通して聞こえる音にときどき知らない世界を夢想する。声の低い車、気違いみたいな鳥、いなくなってもしばし耳に心に残るヒトの子どもの話し声。ずっと遠くまでいくと寄せては返す世界の果ての海。誰かヒトの足音を時計の音のように聞いては、どこへ行くのだろうかと答えなく想像する。

ぜんぶ微かに思うことなのだけれど。目をつぶっていたほうが、うずくまっていたほうが、あたしは世界を練り歩ける。さっきだってあたしは塔がいっぱいある知らない国の夜明けをみた。無音の合図で鳥達が羽ばたき、ピンクと青のまざった空に黒い影を散らしていく。バイクが一台とおり去る。あたしはまだ夜の残る路地に座って鼻を澄ます。すると魚の焼く音がした。

お腹が空いたと気がついて起きて、さっきまで観たもの聞いた音を全部忘れる。

でも、ときどき思い出す。ふしぎとずいぶんと時間が経ってから。



[ 2014.06.18 | 猫日記 | コメント: 0 | PageTop↑ ]

秘密