ささみむり
2014.06.30
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猫である。

昨日はとつぜん凄い雨が降ってきた。あたしも息子もなかなか驚いたし、おののいた。いっぽうでくねくね(ヒト)は、なんだか嬉しそうだった。みんなで窓から外を見ていたのだけれど、あたしたちは音と水の多さに何が起こったのか分からずにせんせんきょうきょうとしていたわけだが、くねくねがそんなあたしたちに向かって笑顔で「大丈夫だよ」と言って声をかけ、あたしの首の後ろを二三回かしゅかしゅと掻いた。

しかしあたしたちはヒトの言葉より本能を信じる。なんら気持ちが休まること無く、驚いたまま固まっていたのだが、うちのなかに水が入ってくることもなく、外だけが大変なことになっていて、あたしたちの世界である部屋の中には何も起こらないことを悟って、少しずつ落ち着きを取り戻すことができた。それでもしばらくはヒトと一緒にことの成り行きを見守って過ごした。何かの映画で、魚が空から降ってくる光景を観たことがあったので、このぶんだとササミか魚が降ってくることもありえるんじゃないか、という期待も少し抱いたのだが、水しか降ってこなかった。

そういえば、最近色の白い女のヒトがときどきうちにくるのだけれど、ササミを持ってきてくれた。あたしと息子は口にすることはないが、彼女のことをイロジロと呼ぶことにしている。あたしたちは現金なので、ササミをもってこられると即「いいヒト」という印象を抱く。ササミをもってくるヒトはきっちりと脳裏に叩き込んで、再来したときには「ようきたやん?」とおあいそを振りまいてあげる。

ササミ。それはあたしたちにとっては食べられる金の延べ棒のようなもの。ほとんどの交渉に有効な通貨である。あたしの持っている動く不動産、猫塔、通称「ポンタワー」には使っていない部屋がひとつあるのだが、それを賃貸することがあれば、家賃はササミにしようと思っている。それこそ随分前にくだんのイロジロに尻尾を踏まれたが、すぐにササミを持って詫てくれたので、不問にした。

ササミ。それは鶏肉の一部であるらしい。一部ということは鶏を解体してようやく手に入れられる肉である。それもゆでたりむしたりしてようやくあたしたちの望むような状態になるものなのだとか。大変である。あたしたちが自分でそれを手に入れようとするととても大変であろう。まずは鶏をとっ捕まえなければならない。実際にやるとなれば、まず見つけるところから始まる。鶏は調べてみると主に養鶏所というところに生息しているらしい。渋谷区にはなさそうである。であれば、移動が大変である。そこを端折ったとして目の前に鶏がいたとしても、youtubeで鶏を検索してみたが、だいぶデカイし、動く。あれをどう捕まえるのか。それを検索してみても「屠殺」という機械を使ったものしか見つけられなかった。であれば、独自の方法で捕まえるしかない。あたしはトムとジェリーで観たことのあるかごを使ったトラップを使ってみようと思っている。棒でささえたかごの下に餌をおいて、かごの下に鶏が潜り込んできたところで棒に巻きつけた紐をひっぱってかごのなかに鶏を閉じ込める、そういう罠である。しかしである。棒に紐を結ぶ、カゴを棒でささえる、鶏の餌を用意する、そのどれをとってもあたしたちにうまく出来そうもない。であれば、もうがぶりんちょしかない。ダイレクト法である。がむしゃらに追いかければがぶりんちょもなんとかできるかもしれない。しかしがぶりんちょしたあとは、鶏の羽をむしる。血を抜く等の手間が必要らしい。ここまで考えて、あたしは気が遠くなるほど面倒に感じてしまった。結論として出したもの思いはシンプルな二文字で「無理」である。この無理の後にもレンジでチャンをするか、蒸すという工程も必要である。生よりあの熱の適度に入ったササミのほうが断然に美味しそうであるし、その味こそあたしたちの所望するササミの姿である。漫画のジョジョみたいにもうコピペで「無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理」とやけっぱちで叫びたくなるほど面倒というか無理な話である。

そう考えてみると、あのササミ、とてもとてもありがたい。そんなわけでこんどイロジロが来た時には、もしくは誰かがササミを手土産に持ってくることがあれば、毛づくろいくらいしてあげようかと思う。

しかしヒトには毛が無い。せんかたなしである。


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