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二度目に会ったくねくねは、あたしと一緒に暮らそうと決意したらしい。のちのちよそのヒトに語っているのを耳にしたのだが、嵐(風と雨が強い天気をいう)が来たのに外にいるということは飼い主がいないはず、と判断したのだとか。あたしに飼い主がいたら、勝手に拉致するとそのヒトが悲しむのではない? そう考えたらしい。だから、嵐の去ったばかりの夕方、くねくねはあたしを探して見つけた途端に、もう自分のうちに連れて帰ることをばっちり決めていたのだ。

あたしを見つけてからしばらくまたくねくねは、ただただそばにいた。他のヒトたちのように「かわいいね」といって撫でたりするのではなく、なんだかごにょごにょと話しかけながらずっとそばにいたのだった。そのうちにまた前の日と同じ女のヒトが現れた。彼女はまたあたしを「ポンちゃん」と呼んだ。二人揃ってあたしの側に少しの間いてから、くねくねはとつぜんあたしを抱きかかえた。それから歩き始めた。

あたしは自分の小さなテリトリーから外に出ることが怖いし、自由のきかない体勢も怖いしで、すぐにくねくねのかいなから逃げ出した。またふたりは側に寄ってきてごにょごにょとあたしに話しかけてきた。そのときは人の言葉それほど理解できなかったので、何を言っているのかよくわからなかったが、たぶん謝っていたのだろう。抱くことをやめたふたりは今度は少し離れて、あたしを呼ぶ、といことをし始めた。

「ポンちゃん、おいで!」

と言って、少し離れたところからあたしを呼ぶ。テリトリーの中であれば、躊躇なく側にいくことができたがのだが、テリトリーを出ると途端に冷や汗がでるほどおそろしい。ちなみに猫は冷や汗をかかない。逃げて隠れる場所までの距離が遠のけば遠のくほど、身の危険を感じるからである。それでも、何十分もかけて、くねくねと女のヒトはあたしを呼んだ。大丈夫だよ、おいで、というようなことを言って呼んだ。他のヒトたちのように、ちょっと触って去っていくことがないのであたしは不思議に思った。独立心がまだ完成していないアウトドア新参ものとしては、庇護の気配は魅力的だった。しかし同時にとてもおそろしくもあった。彼らが時間をかければかけるだけ、あたしは信用してみようか、という気持ちを増やした。意を決して側に寄ってみた。


すると笑いながら二人はあたしをなでた。それを数回繰り返して、つまり数時間くらいかけて二人はあたしをまったくしらない場所まで導いた。最後にくねくねはあたしを抱えて車にのった。車は好きではなかった。捨てられた時にも乗ったからかもしれない。しかしあたしが混乱している間に気がつけば、明るい部屋のなかにいた。くねくねのうちだった。広くて何もないうちだった。あたしは新しいその場所の探検にいそがしくていしたのだが、ヒトふたりはテレビを見ながら何やら大騒ぎをしていた。

アメリカの大きなビルに飛行機が突っ込んだらしい。二人が呆然としている間にあたしはちょっぴりずつ、新しい生活が始まる気配に身を馴染ませていった。なにせ身体が安心と安全を求めていたのだ。ここにそれがあるかもしれない、という希望や期待は感じてしまっていた。車の音がしないし、雨も降らないし、木の枝も折れて落ちてこない。他所の猫に怒られない。家の中はやっぱりほっとした。



[ 2014.09.09 | 猫日記 | コメント: 0 | PageTop↑ ]

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